2020.05.22更新


黄体嚢胞とは、排卵の際に形成される黄体(おうたい)の中に透明な液体が溜まってしまい、風船のように腫れてしまう状態を指します。

黄体は、排卵によって卵子が卵巣から放出される際に、卵巣内に一時的に形成される黄色っぽいホルモン分泌組織です。

ホルモンとしてプロゲステロンとエストロゲンを分泌します。

通常の月経周期において黄体は、妊娠成立しなければ自然退縮し、ホルモン分泌が低下して、ついには子宮内膜がはがれる現象を引き起こします。

これが月経です。

一方、妊娠した場合には、妊娠黄体となり、プロゲステロンとエストロゲンの分泌が続きます。

妊娠初期にはこれらステロイドホルモンを分泌することで、胎盤(たいばん)が完成するまでの間、流産することなく胎児が成長するよう守っています。

このとき、妊娠によって母体内で増加した妊娠性ホルモン(hCG)が黄体を刺激してしまうと、黄体嚢胞が起こります。

妊娠初期に黄体嚢胞ができる場合、排卵した側の卵巣に発生するので、左右どちらかであることがほとんどです。

黄体嚢胞自体は、一時的なもので基本的に害はありません。

ところが、溜まった液体による重さで黄体嚢胞が入っている卵巣が捻れてしまったり、膨らんだ部分が破れてしまったりする可能性もあるため、注意が必要です。
 
●原因
黄体嚢胞は、妊娠に伴い増加した妊娠性ホルモン(hCG)が、黄体を過剰に刺激することが原因と考えられています。

しかし、なぜ過剰に刺激されてしまうのか、過剰に刺激されることでなぜ液体が溜まってしまうのか、などの具体的なメカニズムははっきりとわかっていません。

また、通常は妊娠初期の女性に比較的よく見られるものですが、まれに絨毛性(じゅうもうせい)疾患の方にも見られます。
 
●症状
黄体嚢胞ができただけでは、自覚症状はほとんどありません。

ただし、腫れた重みによって卵巣が捻れてしまうと、激しい痛みが現れます。

これは、捻れることによる血流の悪化と、捻れることによる組織の牽引(引っ張られること)によって起こるものです。

腫れた側の卵巣が捻れるため、通常は左右どちらかの下腹部に痛みを感じます。

強い痛みのため、同時に吐き気や嘔吐が現れることもあります。

また、まれですが、腫れた黄体嚢胞が破裂してしまうこともあります。

捻れたときのような激しい痛みは出にくいのですが、もともと水風船のような状態の黄体嚢胞が破れるため、お腹の中で少量の出血があり、漏れた液体による刺激で軽度の痛みが現れることもあります。
 
●検査・診断
通常は内診と超音波検査でほぼ確実にみつけられます。

ただし、妊娠初期に卵巣の腫れが見つかった場合、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)という別の疾患である可能性も考えなければなりません。はじめて見つかった場合には、黄体嚢胞と卵巣嚢腫(腫瘍)の判別が難しいことが多いため、少し時間をおきながら数回の検査で判断していきます。

黄体嚢胞であれば一時的な腫れなので数週間後に小さくなったり消えたりすることがほとんどですが、卵巣嚢腫(腫瘍)ではそのようなことはありません。
 
●治療
黄体嚢胞は、基本的には自然に消えていくものなので、必ず治療が必要なわけではありません。

卵巣嚢腫(腫瘍)ではなく黄体嚢胞だと判断できれば、経過観察でよいと考えられています。

ただし、卵巣が捻れる、もしくは破裂していることを疑う症状がある場合や、それらが明らかに判断できる場合には治療が必要になります。

具体的には、完全に捻れてしまった場合は手術療法が必要になります。

破裂の場合には、必ずしも手術が必要なわけではなく、お腹の中での出血や痛みがごく軽度であれば、入院または外来での経過観察が可能です。

また、腫れた原因が卵巣嚢腫(腫瘍)である場合には対応が異なります。
 
 

 

投稿者: 高橋整骨院

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